カスタマーハラスメント防止措置が義務に|2026年10月1日から全事業主へ
一般社団法人 日本総合検定資格センター
2026年10月1日から、すべての事業主に、カスタマーハラスメントによる就業環境の悪化を防ぐための雇用管理上必要な措置が義務づけられます(改正労働施策総合推進法)。
「お客様だから我慢する」という前提が、制度の面から改められます。現場と会社の両方に、備えが要ります。
※本記事は2026年8月時点の内容です。実務では最新の情報をご確認ください。
そもそもカスタマーハラスメントとは
顧客等の言動のうち、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超え、働く人の就業環境を害するものを指します。
判断の要素は二つです。
1. 要求の内容が妥当か
2. 要求を伝える手段・態様が相当か
ここで大切なのは、不当な要求であればただちにカスハラになるわけではないという点です。就業環境を害する程度に至っているかまで含めて見ます。逆に、要求内容が正当でも、長時間の拘束や脅し、土下座の要求といった手段であれば、ハラスメントにあたり得ます。
線引きの練習
| 場面 | 判断 |
|---|---|
| 「商品が壊れていた。交換してほしい」と強い口調で言われた | 正当な苦情にあたる場合が多い。口調が強いだけでは該当しない |
| 「詫びに社長を出せ」と2時間繰り返す | 要求内容・時間の両方が相当でなく、該当し得る |
| 規約上できない返金を求められた | まず法令・契約上の権利(解除・返品・追完請求など)を確認する。返金の義務がない場合は、理由を説明して丁寧に断る |
| 「担当者の名前をSNSに書く」と言われた | 従業員個人への攻撃にあたり、該当し得る |
| 毎日同じ内容で電話がかかってくる | 頻度と継続時間から判断する。記録を取り、上長へ |
腹が立ったかどうかで決めないのが、この線引きの難しいところです。実際の判断は、言動の内容・態様・頻度・継続時間・就業環境への影響を総合的に見て行われます。上の表も、一つの目安として読んでください。
会社に求められること
おおむね次のような内容です。
- 方針を決めて周知する(毅然と対応することを明示する)
- 相談窓口をつくり、知らせる
- 相談した人が不利益を受けないようにする
- 発生したときの対応手順を定める
- 対応した人への配慮(話を聞く、必要なら休ませる)
現場が「これはカスハラか」を一人で判断する形にしないことが要点です。判断を現場に押しつけないのが、会社側の責任になります。
現場で変えること
1. 一人で抱えない……長引いたら上長や複数名で対応する
2. 時間を区切る……「本日は○分ほどお時間を頂戴し、続きは改めて」
3. 記録を取る……日時・内容・発言・対応者
4. 場所を変える……他のお客様の前で続けない
5. 要求には応じない……その場をおさめるための約束をしない
断るときの言い方
ご要望は承りましたが、ご希望に沿いかねます。誠に申し訳ございません。
同じご説明の繰り返しになりますので、本日はここまでとさせていただきます。
そのようなお言葉には、お答えいたしかねます。
丁寧な言葉のまま、内容ははっきり断る。あいまいな言い方は、「まだ交渉の余地がある」と受け取られます。
従業員を守る工夫
- 名札のフルネーム表示をやめるなど、個人が特定されない工夫
- 対応した人が責められない仕組み
- 対応後、上長が話を聞く時間をとる
我慢することが仕事ではない。この前提を、全員で共有しておくことが、いちばんの備えになります。
東京都の条例
東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例は、2025年4月1日に施行されています。何人に対してもカスハラを禁じたうえで、都内の事業者には防止措置の努力義務を課すもので、罰則は設けられていません。
「なんとなく」でやってきた仕事を、根拠のある形に。
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