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御朱印の梵字(種字)一覧|字の形から本尊を読み解く

一般社団法人 日本総合検定資格センター

お寺で御朱印をいただくと、中央に押された朱い印の中に、見慣れない一文字が入っていることがあります。漢字でもひらがなでもない、曲線の多いあの文字——それが梵字(ぼんじ)です。

この一字は飾りではありません。そのお寺の本尊が誰なのかを指し示す、有力な手がかりです。読めるようになると、御朱印は「きれいな記念」から「読み物」に変わります。

梵字(種字)とは

仏・菩薩・明王といった尊格を、梵字一字で表したものを種字(しゅじ)、または種子と呼びます。

御朱印に見られる梵字は、正確には悉曇文字(しったんもじ)という書体です。古代インドでサンスクリット語を書くために使われた文字が、仏典とともに中国へ渡り、平安時代のはじめに空海ら留学僧の手で日本へ持ち込まれました。密教では、この一字一字が仏そのものを象徴すると考えられ、印章や供養塔にも用いられてきました。

つまり御朱印の梵字は、インドから千数百年かけて日本にたどり着いた文字なのです。

御朱印で出会う梵字(種字)一覧

まず、字の形を見てみましょう。

御朱印で出会う梵字(種字)15字の字形一覧

読み方と表す仏さまを一覧にすると、次のようになります。

読み表す仏さま出会いやすい場所
キリーク阿弥陀如来・千手観音浄土系の寺院、観音霊場
バク釈迦如来禅宗の寺院
ベイ薬師如来薬師如来を本尊とする寺院
サ聖観音観音霊場の札所
カーン不動明王真言宗の寺院、成田山など
バン大日如来(金剛界)真言宗の寺院
アーンク大日如来(胎蔵界)真言宗の寺院
カ地蔵菩薩地蔵霊場
マン文殊菩薩文殊信仰の寺院
タラーク虚空蔵菩薩虚空蔵信仰の寺院
サク勢至菩薩十三仏の霊場
ユ弥勒菩薩十三仏の霊場
アン普賢菩薩十三仏の霊場
ウン阿閦如来十三仏の霊場
キャ十一面観音十一面観音を本尊とする寺院

もっとも出会う機会が多いのは、キリーク(阿弥陀如来)とサ(聖観音)です。ただし観音霊場でも、札所の本尊が千手観音・十一面観音・如意輪観音などであれば種字は変わります。西国三十三所のように本尊が数種の観音にわたる霊場では、種字の違いそのものが札所ごとの個性になります。

また、一つの種字が複数の尊格に使われることもあります。種字は本尊を「断定する」ものではなく、「推し量る」ためのものと考えてください。

点の意味が分かると、字が読めてくる

一覧をよく見ると、形はよく似ているのに読みが違う字があることに気づきます。悉曇文字は「基本の一字に記号を足して音を変える」という仕組みを持っているためです。

  • 字の上に置く小さな点(空点=くうてん)… 音節の末尾の鼻音を示す記号で、日本の慣用読みでは「ン」と写します。バン・マン・アン・ウン・カーンは、いずれもこの点を持っています。点の下の三日月は仰月点といい、音は変えずに字を荘厳する飾りです
  • 字の右横に並ぶ二つの点(涅槃点=ねはんてん)… 音節の末尾の気息音を示す記号で、日本の慣用読みでは「ク」と写します。バク・サク・キリーク・タラークがこれにあたります
  • 字の上・右・下に添える記号 … 字がもともと持つ母音「ア」を、「アー」「イー」「ウ」などに変えます

胎蔵界大日のアーンクは、この二つの点をどちらも備えています。「アー・ン・ク」と、読みがそのまま字の形に対応しているわけです。

この字は五点具足(ごてんぐそく)の阿字とも呼ばれます。阿字がア(発心)→アー(修行)→アン(菩提)→アク(涅槃)→アーンク(方便究竟)と展開する「阿字五転」の、五段階すべてを具えた完成形という意味で、丸い点が五つあるという意味ではありません。

たとえば「サ」(聖観音)の右に二つの点が付けば「サク」(勢至菩薩)。まったく別の字を15個覚えるのではなく、土台の字+点として見るのが、無理なく身につけるコツです。

その印は三宝印? それとも御宝印?

寺院の御朱印の中央に押される印には、大きく二つの系統があります。

  • 三宝印(さんぼういん) … 「仏法僧宝」の四字を刻む印。仏・法・僧の三宝への帰依を表し、禅宗系の寺院などで広く使われます
  • 御宝印(ごほういん) … 宝印のうち、本尊を表す梵字を刻んだもの。蓮台に乗った火炎宝珠の輪郭の中に梵字を配した意匠が代表的で、観音霊場の札所で多く見られます(真言や卍を刻む宝印もあります)
四字が読めれば三宝印、梵字が見えれば御宝印。

この一点を見分けられるだけで、いただいた御朱印から読み取れる情報がぐっと増えます。中央の印に「サ」があり、墨書が「大悲閣」であれば、そこは観音を祀る霊場の札所である可能性が高い、という具合です。

十三仏の順で覚えると忘れにくい

種字をばらばらに暗記しようとすると、なかなか定着しません。おすすめは、十三仏という枠組みに沿って覚える方法です。

十三仏とは、初七日から三十三回忌までの追善法要をそれぞれ司るとされる十三の尊格のことです。この順に並べると、上の15字のうち13字がひとつながりになります。

不動(カーン)→ 釈迦(バク)→ 文殊(マン)→ 普賢(アン)→ 地蔵(カ)→ 弥勒(ユ)→ 薬師(ベイ)→ 観音(サ)→ 勢至(サク)→ 阿弥陀(キリーク)→ 阿閦(ウン)→ 大日(バン)→ 虚空蔵(タラーク)

法事で耳にする順番と重なるため、意味とセットで頭に残りやすいのが利点です。

参拝のときに、ひとつだけ

梵字が読めるようになると、つい印の細部を確かめたくなります。ただし御朱印は参拝の証です。まずは本堂で手を合わせ、御朱印をいただいたその場では書き手の手元をのぞき込まず、静かに待つ——この順番だけは変わりません。

字を読むのは、帰り道のお楽しみに取っておきましょう。

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